「寝室は2階にする?それとも1階にした方がいい?」
注文住宅を建てるとき、多くの人が悩むポイントです。
若いうちは2階寝室で問題なくても、将来の生活や介護を考えると、1階に寝室スペースを設けておくことが非常に大切です。
私は医療・介護分野で働きながら、これまで500件以上の高齢者宅を訪問してきました。
その経験から言えるのは。。。
「95%の身体に障害を持つ高齢者は、1階にベッドを置いて生活している」
「リビングに介護ベッドを置いている人も少なくない」
という現実です。
この記事では、そんな現場の実感をもとに、下記のことを解説します。
・なぜ1階寝室が理想的なのか
・若い時からできる“将来を見据えた工夫”
・医療・介護の現場から見た具体的なメリット
これから家を建てる方が後悔しないよう、一生快適に暮らせる間取りづくりのヒントとしてお読みください。
私の経験から分かった現実:95%の高齢者は「1階で寝ている」

私はこれまで理学療法士として、訪問リハビリの仕事を通して、500件以上の高齢者宅を訪問してきました。
その中で強く感じるのが、「ほとんどの方が1階にベッドを置いて生活している」という現実です。
中には「若い頃は2階の寝室を使っていたけれど、膝を悪くして階段の上り下りがつらくなった」「退院後から1階にベッドを置くようになった」という方が非常に多く、身体に不調が出てから1階に移動するケースが圧倒的です。
つまり、どんなに元気なうちに家を建てても、年齢とともに“1階中心の生活”に変化する可能性が非常に高いということ。
だからこそ、「最初から1階に寝室を設ける」また「将来ベッドを置けるスペースを確保する」ことが重要なのです。
若いうちは2階寝室でもOK。大切なのは“将来への準備”

実際、私自身も家を建てたときは「夫婦の寝室は2階」にしました。
しかし、将来的な介護や体の変化を考えて、1階にフラットな畳コーナーを設け、扉を付けて個室のように使えるように工夫しました。
この畳コーナーは普段は子どもの遊び場や昼寝スペースとして使っていますが、将来、私や家族のどちらかが病気やケガで階段を上がれなくなったときには、そのままベッドを置いて寝室として使えるように設計しています。
このように「若いうちは2階」「将来は1階」という選択肢を残しておくことで、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる家になります。
1階に寝室を設けるメリット

では、実際に1階に寝室をつくるとどんなメリットがあるのでしょうか。
医療・介護の現場視点を交えながら、主なメリットを7つ紹介します。
1. 将来的な介護や看護がしやすい
介護が必要になったとき、寝室が1階にあると介助する側もされる側も圧倒的にラクです。
介護ベッドや車椅子は2階に上げられないため、1階に寝室があることで在宅介護がスムーズに行えます。
また、訪問看護師やヘルパーが出入りしやすく、ベッド周りに医療機器を置くスペースも確保しやすいという利点があります。
2階寝室だと、階段での転倒リスクや介助者の負担が増えるため、1階寝室の方が現実的です。
2. 階段の上り下りが不要で、足腰にやさしい
年齢を重ねると、階段の上り下りが身体への大きな負担になります。
特に膝関節症や腰痛を抱える方にとって、毎日の昇降は転倒リスクを高める行動のひとつです。
1階に寝室を設ければ、起きてから寝るまでの生活動線がワンフロアで完結するため、体力的にも安全面でも安心できます。
3. 夜間のトイレ動線が短く、安全
高齢になると夜間にトイレへ行く回数が増えます。
2階寝室だと、暗い階段を降りる必要があり、転倒事故が起きやすいのが現実です。
1階に寝室があれば、トイレまでの距離が短く、段差も少ないため安全。
4. 家事・育児との相性が良い
1階寝室は、家事や育児との動線もスムーズです。
洗濯物を干したり、子ども部屋へ行ったりする動線が短く、家全体の効率が良くなります。
5. 家族の気配を感じやすく、安心感がある
リビングやキッチンと同じフロアに寝室があることで、家族の出入りや子どもの様子を自然に感じられます。
高齢の親世代と同居する場合も、1階に寝室を設けることでお互いの存在を身近に感じられる安心感が生まれます。
6. 災害時や緊急時にすぐ避難できる
火災や地震、停電などの非常時、1階寝室ならすぐに屋外へ避難できます。
特に夜間の地震では、2階からの避難が遅れて命に関わるケースもあります。
1階寝室であれば、避難経路が近く、すぐに安全を確保できるという点でも安心です。
7. 将来的なリフォーム費用を抑えられる
最初から1階に寝室を設けておくことで、将来のリフォーム費用を抑えられます。
2階から1階への寝室移動に伴う改修(階段昇降機・段差解消・間仕切り工事など)は、後から行うと高額になりがちです。
最初から1階に寝室、またはベッドを置ける畳コーナーを設けておけば、「将来リフォームせずに住み続けられる家」になります。
実例紹介:筆者の家の間取りの工夫
私の家では、若い時に2階を主寝室としましたが、将来を見据えて1階にも“いつでも寝室に変えられる空間”をつくりました。
1階リビング横に4.5畳ほどの畳コーナーを設け、引き戸で仕切れるように設計。
普段は開放して子どもの遊び場や客間として使っていますが、将来的にはここに介護ベッドを置いて寝室として使う計画です。(なるべく2階寝室で生活できるように頑張りますが)
畳コーナーを1段上げず、床とフラットにしたのもポイントです。
段差がないことで、将来的に車椅子や歩行器でも安全に出入りできるようにしています。
このように、「今」と「将来」を両立できる柔軟な間取りをつくることが、長く快適に暮らすための秘訣です。
1階寝室を設ける際の注意点とポイント

1. プライバシーを確保する
1階寝室は道路や庭に近く、外からの視線が気になりやすい位置です。
すりガラス・腰高窓・植栽の目隠しを使って、快適かつ安心して眠れる空間にしましょう。
2. トイレ・洗面・浴室の近くに配置する
介護や体調不良時に便利なのが、水まわりとの近接配置です。
寝室からトイレまでの距離が短いだけで、日常の動作負担が大幅に減ります。
3. 防音対策をして静かな環境に
リビングに隣接する場合は、防音ドアや吸音壁紙を採用し、音のストレスを軽減するのがおすすめです。
まとめ:将来を見据えた家づくりには「1階寝室」がベスト

若いうちは2階の寝室でも問題ありません。
しかし、医療・介護の現場で500件以上の家庭を見てきた経験から断言できるのは、「最終的にほとんどの方が1階で寝るようになる」という事実です。
そのため、家を建てるときには
・最初から1階に寝室を設ける
・または1階にベッドを置けるフラットな畳コーナーをつくる
という工夫をしておくことが、将来の安心につながります。
家づくりは今だけでなく、10年後・20年後の自分と家族の暮らしを考えることが大切です。
1階寝室のある家は、歳を重ねても快適で、家族みんなが安心して過ごせる住まいになります。